メルセデス・ベンツ CLR 1999

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メルセデス・ベンツ CLR 1999 ( Mercedes-Benz CLR 1999 )

ドイツの自動車メーカー「ダイムラー」を代表する高級車ブランド、「メルセデス・ベンツ」の、1999年ル・マン24時間レース用に開発・製造されたレーシングモデル、CLRです。
このマシンは、ご存知の方も多いと思いますが、「宙を舞うレーシングカー」として悪名高いレーシングカーです。

ル・マンに持ち込まれた当初は、その強烈な印象と洗練されたスタイルによって優勝候補の一角として期待されてました。
しかし、予選からアクシデント続きで、予選2日目には、マーク・ウェバー(この頃から居たのね)の搭乗する4号車が、突如フロントから浮き上がり、コースを離陸し宙に舞うと言うアクシデントが発生。
そのままCLRはアスファルトに叩きつけられました。
続いてレース決勝前のウォームアップランにおいても、ダウンフォースを増す対策を施しましたが、同じ4号車がまたしても宙を舞い、屋根から仰向けにアスファルトに叩きつけられたマシンは大破し修復不可能となり、この二度目の事故でウェバーは膝を負傷、そのまま決勝出走を断念せざるを得なくなりました。

それでもメルセデスは残る2台を決勝に出走させる事に決め、フロントに更なる離陸対策として左右に2枚のカナードを装備しました。
しかし、こうして迎えた決勝レースも、付け焼刃的な対策で問題が解消できる物でなかった事を実証する三度目のアクシデントがメルセデスチームを襲う事となります。
決勝レースの76周目、ユノディエールと並んでコースの中でも最高速が出るエリアでもあるインディアナポリスのコーナー手前の直線区間で、トヨタのTS020を追っていた3位走行中の5号車が、4号車と同じように舞い上がり、空中で回転しながらコース脇の林に落下するアクシデントが発生。

通常は車体上部を通過しダウンフォースを生み出すはずの気流が、すぐ前を走っていたTS020のスリップストリーム、もしくは乱気流が影響し、一気に車体底部へ流れ込んだため起こったと考えられています。
当時、私もこの映像を見てましたが、一瞬にして空高く宙を舞い、カメラアングルから林の中にあっと言う間に消えていった様は、戦慄的でした。
幸いにも着地した落下点の状況が良かったのもあり、ドライバーは軽傷を負ったのみのダメージで済みました。
この事故の直後、メルセデスは残る6号車を呼び戻しレースを棄権。

この様子はTV中継などを介して世界中に配信され、大きな衝撃を与え、また、メルセデスのブランドイメージを大きく傷つける事態となります。
FIAは原因を調査し、複合的な要因と結論付けましたが、マシンの設計に根本的な問題があったことは明らかだと言われています。
特に、空力設計上の欠陥。
長過ぎるオーバーハング、フロントノーズ上面で発生するダウンフォースを頼り過ぎたハードなフロントサスペンションとトラクションを重視して柔らか過ぎたリヤサスペンション、この組み合わせによりピッチングが激しくなり、スリップストリームに入った際に、フロントのダウンフォースが減少し、車体下面に本来上面を流れるはずだった空気が入り込んでしまった為に発生した事故でした。

メルセデスらしい特徴的なシルバーをベースとした美しく、洗練されたデザインのCLR。
現在も、唯一宙を舞わなかった6号車のみがドイツのメルセデス・ベンツ・ミュージアムにて保管されています。
なお、事故後、メルセデス・ベンツはル・マン24時間レースから撤退、現在に至るまで復帰していません。

[出典]Ultimatecarpage.com

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